「魏志倭人伝」を読んでご先祖様の生活を想像してみる

 歴史ってロマンに溢れています。
 
 
僕は小さなころから歴史が大好きでした。
 
お気に入りだったのは中国の「三国志」の時代です。
後漢が滅亡したのち、中華を魏、呉、蜀に三分割して戦争をしていたあの時代です。
 
三国志というのはこの時代の歴史書であり、それをわかりやすく物語にしたものを「三国志演義」といいます。
 
横山光輝の漫画「三国志」シリーズはこの三国志演義を漫画化したものです。(厳密には吉川英治「三国志」を元に描かれたものです。)
 
 
さてその三国志、名前は知ってるけどまだ読んだことないよって方もいらっしゃると思います。
 
三国志は今までたくさんの小説家によって書かれてきました。
僕が一番よく読んでいるのは宮城谷昌光の「三国志」シリーズですが、ちょっと向き不向きのある作家さんなので置いときます。
 
やはり初めて三国志に触れる方にお勧めなのは、吉川英治の「三国志シリーズ」でしょうか。
基本的なストーリーとしては三国志演義に沿いつつ、物語として非常に面白い作品です。
 
ちなみに吉川英治は2013年に没後50年が経過し、著作権がフリーになったことで全作品が無料で読めるようになりました。
気になった方はぜひ一度読んでみてください。青空文庫へのリンクを貼っておきます。
 
 
 
今日はそんな三国志とふかーい関係がある「魏志倭人伝」を読んで、僕たちのご先祖様がどんな生活をしていたか想像してみませんかってお話です。
 
 

 

  • 魏志倭人伝とは

 
本題に移ります。
 
みなさん「魏志倭人伝」はご存知でしょうか。
歴史を習ったことのある方なら絶対に目にしたことのある単語ですね。
 
実は正確には「魏志倭人伝」という名前の書物は存在しません
 
じゃあ魏志倭人伝ってなんやねんと言いますと、「三国志」の中の「魏書」の第30巻にある「東夷伝」の中にある「倭人条」という一部分の通称なんです。長い。
 
わかりやすく例えると「キャプテン翼」という作品の「ワールドユース編」の中にある「アジアユース選手権の章」の「VSイタリア戦」みたいなもんです。
一瞬で終わるやつですね。魏志倭人伝も約2,000文字しかありません。
 
またまた名前は知っているけど読んだことないよって方もいらっしゃると思います。
 
簡単に内容を説明すると、当時の日本の文化や風習、暮らしなどを中国側から紹介したもので、僕たちも知っている「邪馬台国」や「卑弥呼」という単語はこの魏志倭人伝に書かれたものです。
 
そんな魏志倭人伝、改めて読んでみると結構面白い記述もあったので、少し紹介してみたいなと思った次第であります。
 
それでは想像してみてください。
なんちゃってタイムトラベルに行ってみましょう。
 
 
(この先にある日本語訳は完全に意訳です。細かい言い回しが違ってしまっていることはご容赦ください。また当時の単語が今でいう何に当たるのか議論されているものの場合、できるだけわかりやすくする目的でより馴染みのある方を選択しております。本文中に誤りがある場合はお知らせいただければすぐに訂正いたします。よろしくお願いいたします。) 
 
 
 
  • 暮らし

 
「山や島に沿って国や村がある」(山島爲國邑)
「その土地には牛、馬、虎、ヒョウ、羊、白鳥がいない」(其地無牛馬虎豹羊鵲)
 
ほんとにいなかったかはわかりません。少なくとも白鳥に関しては越冬で飛来してきていたのでは。
となると飛来した場所が国の勢力圏外であった場合か、そもそも鵲という字が白鳥を指すものでないかのどちらかでしょう。
 
 
「稲や麻を栽培したり蚕を買ったりして糸を紡ぎ、麻布や絹や綿を生産している」(種禾稻紵麻蠶桑緝績出細紵縑緜)
 
稲作と同時に麻や養蚕も行われていたのですね。結構生活には余裕があったのでしょうか。
少なくとも稲作をしているので、その日暮らしの生活ではないのでしょう。
僕よりもいい生活してそう。困る。
 
 
 
  • 食生活

 
「倭の水人は潜って魚や蛤を獲ることを好んだ」(今倭水人好沈没捕魚蛤)
 
水人が何かわかりませんが、水辺に住んでいる人たちのことでしょうか。
蛤はハマグリと読みますが、おそらくハマグリだけでなく貝類全般を指すのでは。
 
 
「生姜、橘、山椒、ミョウガなどがあるが、栄養があっておいしいということを知らない」(有薑橘椒襄荷不知以為滋味)
 
やはり薑橘椒襄が現在でいうどんな植物なのか、正確にはわかりません。でもおおむねこんな感じみたいです。
知らないって書くよりも、それうまいやつやで!って言うてくれた方が親切じゃないかなあ。
 
 

「冬でも夏でも生の野菜を食べていた」(冬夏食生菜)

 
生野菜となると保存がきかないので、その日に収穫したものをその日のうちに食べきっていたんでしょうか。
新鮮な生野菜をまるかじり、いいですねえ。もちろん無農薬です。
 
 
「人は酒を好む」(人性嗜酒)
 
僕といっしょー
この時代のお酒ってどんな味がするんでしょうねえ。
飲んでみたいですね。
 
 
「飲食には竹と木でできた器を用い手を使って食べる」(食飲用邊豆手食)
 
邊豆という言葉が器を指しているのは確実なようですが、どんなものかはいろいろ議論されているみたいです。
ここではわかりやすく竹と木と表現しました。他の文献も読んでみます。
 
 
 
  • ファッション

 
「男性は年齢に関係なくみんな顔と体に入れ墨がある」(男子無大小皆黥面文身)
「諸国の入れ墨は大小左右異なっておりまた、身分の差によっても違いがある」(諸國文身各異或左或右或大或小尊卑有差)
 
今では考えられません。
魏志倭人伝には「大魚や水鳥を避けるためのまじない目的から装飾目的に変わった」とあります。
 
中国では前漢初期に英布という武将がいましたが、罪を犯して身体に入れ墨を入れられたのち黥布と呼ばれるようになったそうです。
 
つまりこの頃の中国(中原)では、入れ墨は犯罪者かどうか一目で判断するための目印となっていたと。ちなみに黥という字は入れ墨を指します。
 
罪人に入れ墨を入れる風習は、中国の影響を受けた少し後の時代の日本でも行われたようです。
 
純粋な装飾目的の入れ墨という意味で考えれば、今の世の中とそう変わらない気もしますね。
最近タトゥー流行ってますし。
 
 
「男性は冠をかぶらず木綿を頭に巻いている。衣服は横幅のある布をただ結んで束ねており、ほとんど縫われていない」(男子皆露紒以木緜招頭其衣横幅但結束相連略無縫)
「女性は前髪をたらしている。衣服は一枚の布の中央に穴をあけ、そこに頭を通している」(婦人被髪屈紒作衣如單被穿其中央貫頭衣之)
 
これは男女の衣服についての記述ですね。
僕はこの頃から衣服の性差があったんだなと驚きました。
 
男女で違う服を着る文化はいったいいつどこで生まれたのでしょうか。
気が向いたら今度ゆっくり調べてみます。
 
 
「みんな裸足」(皆徒跣)
 
僕もいまはだしー
 
 
 
  • その他

「長寿で百歳、あるいは八、九十歳の人もいる」(其人壽考或百年或八九十年)
 
ちょっと現実的ではない数字かと思います。
寿命そのものは延びてきてたんやとは思いますがさすがに百歳かと。
 
もしほんとならおめでたいですね。総理大臣にお祝い状送ってもらいましょ。
 
 
「女の人はみだらでなく、嫉妬もしない」(婦人不淫不妬忌)
 
これはぜったいうそうそ
嫉妬をしない女の人なんか今も昔もいないと個人的には思いますが。
女性の方、どうなんでしょう。
 
 
「身分の高い人は四、五人の、低い人でも二、三人の妻を持った」(其俗國大人皆四五婦下戸或二三婦)
 
大人と下戸は身分の差です。要は一夫多妻制だったんですね。
 
これで女性に嫉妬する人がいないってほんとですか。
それとも最初からそういった文化にあれば気にならないものなのでしょうか。
 
 
「盗人がいなくて訴訟も少ない」(不盜竊少諍訟)
 
現代の大阪の数倍平和やで。
 
 
 
 
 
いかがでしたか。
魏志倭人伝って意外と面白いと思いませんか。
 
これだけを読んで「歴史はこうだった」と決めつけてしまうのはよくないですが、ひとつの読み物としてはすごく興味深い記述が多かったです。
 
 
歴史を学んでいて楽しい理由は想像の余地がたくさんあるからではないでしょうか。
歴史において絶対に正しいことってすごく少ないです。
 
例えば魏志倭人伝に登場する卑弥呼
小学生でも知っているこの女性は日本側の文献では全く登場しません
 
日本の文献に残っている人で「この人っぽいなあ」というのはあるみたいですが、実際にどうだったかなんてそんなこともう誰にもわかりません。
 
極論を言ってしまうと、もしかしたら邪馬台国も卑弥呼も存在しなかったかもしれない
ただいたずら好きの中国人が適当に喋った話が大ごとになったのかもしれない。
 
あくまでもしかしたら!ですけどね。
でもそう考えるとちょっと楽しくなってきませんか。
僕はとっても楽しいです。
 
 
興味がある方は一度この魏志倭人伝を手に取って読んでみてください。
現代語訳されたものが岩波文庫から出版されています。

 

新訂 魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝―中国正史日本伝〈1〉 (岩波文庫)

新訂 魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝―中国正史日本伝〈1〉 (岩波文庫)

 

 

 ネットで探せば全文訳も簡単に見つかるのでそれでも十分かと。
 長々とお付き合いいただきありがとうございました。