星新一の父が思い描いた大正37年の日本が面白い!星一「三十年後」の感想

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こんな本を読みました。
 
三十年後 (ホシヅル文庫)

三十年後 (ホシヅル文庫)

 

 

 
政治家を引退し、無人島で30年すごしたあと、大正37年の東京にもどってきた91歳の嶋浦太郎。 知り合いは、なぜかみな若いときのまま……。
科学の力、薬の力で、世の中をよくしたいと考えた星一の夢の世界。
なつかしく、待ち遠しい。もうひとつの星ワールドへ、ようこそ!
 
星新一公式サイト https://www.hoshishinichi.com/project/5.html からの引用です。
 
 
 
これは「ショートショートの神様」と言われるSF作家星新一の父親で、星製薬の創業者である星一が1918年に出版したSF小説です。
刊行から97年後の2015年に福島県いわき市で「星新一星一展」が開かれるのを記念して復刊した、と星新一公式サイトにありました。
 
ちなみに定価は税別1001円
星新一ファンの心をくすぐってくる。
 
 
カバーをとると表紙はこんな感じになっています。
 

 
これは1918年の刊行当時の表紙を再現されているようです。
 
1918年というと今年でちょうど100年になるんですねえ。なんとまあ。
 
 
星新一のお父さんがSF小説を書いていた、それだけでつい手に取りたくなるこの本。
今日は星一によるまぼろしSF小説、「三十年後」をご紹介します。
 
 
もくじ
 
 

 

 
 

星一について

 
この本の作者である星一小説家ではありません
東洋一の製薬会社として知られた星製薬の創業者であり、衆参5回の当選を誇る政治家でもありました。
 
そんな星一が自社のPR目的で出版したのがこの「三十年後」というSF小説です。
 
 
小説でPR?と思った方にご説明しますね。
 
 
物語は大正37年の東京が舞台です。
しかし大正は天皇崩御によって15年で終わってしまって、37年を迎えることはなかったので実際には昭和23年の日本ということになります。図らずもパラレルワールドになっているわけです。
 
そんな大正37年の東京は自動車や船などがなくなっていて、飛行機が主な交通手段になっていたり、軍隊や警察が廃止されたりと主人公の知っている「30年前の東京」とは大きく様変わりしていました。
 
それもこれもみーんな「ある製薬会社」の開発した薬のおかげなんですがその製薬会社こそ、星一が現実世界でも創業した星製薬株式会社ですよーと。
 
恐ろしいほどにダイレクトなマーケティングですね。
 
 

星一の想像した「大正37年の日本」

 
面白いのはその発想力です。
 
当時では想像できないような「未来」がたくさん描かれていて、100年後の現在でも「あったらいいなあ」と思う面もあれば逆に、「そんな未来なんてごめんだ!」と思ってしまう面もあります。
 
一部を紹介しますね。
 
 
頭に当てるだけで脳の病気がわかる「側頭機」
 
病気、と書きましたが大正37年の東京には今で言う病気なんかはありません。
ここで言う病気とは例えば怒りっぽい性格だったり頭がちょっと馬鹿だったり、そういうことを意味します。
 
そしてその病気を治す薬を星製薬が発売していてみんなを幸せにしています。
PRが入りました。
 
 
頭で思うだけで文章が書ける「念写板」
 
頭に書いた文章を目の前の紙に念写することで活版の必要がなくなりました。
現在とは違う意味での進化を遂げていますね。
僕はパソコンのが便利や思いますけど。
 
 
どんな名演技も生で見られる「活動写実」
 
生物に写真を焼き付ける技術だそうです。
体格さえ似ていればどんな人でも有名人そっくりになるんですって。
 
でも演技はどうするの?
 
それは星製薬の開発した演技力を高める薬で解決です。
PRが入りました。
 
 
人体の重力で発電し走る「自動歩行機」
 
近場にいくのにわざわざ飛行機は…と思っている方、大丈夫です。
これは自分の体を傾けた方向へ自然に進むスケート靴です。
充電の必要ももちろんありません。
 
 
1日6回発行される新聞
 
すごい進化です!
さっき起こった事件もこれならすぐに知ることができますね
 
インターネット?なんですかそれは。
 
 

まとめ

 
大正37年の東京はいかがだったでしょうか。
でもこれでもまだまだ一部です。実際に読んだ大正37年はもっと繁栄していましたよ。
 
 
あくまでSFなので30年後の未来を想像するというものではなく、未来ってこんなんかなーみたいなふわっとした感じで書かれていましたね。
 
そしてこんな星一ほどの想像力を持ってしても、コンピューターやインターネットの発明は想像できていませんでした。
いかにこれらが革命的発明だったか。便利な世の中だまったく。
 
 
余談ですがこの三十年後という小説。
実際の執筆は小説家の江見水蔭が行い、星一はアイデアを出しただけだったようです。
このタイミングでそれをいうかと。まあ忙しかったんでしょうね。
 
 
興味がある方は一度手にとって見てはいかがでしょうか。
新品は手に入りにくくなっていますが中古本ならちらほら見かけます。
 
星新一によるあとがきも面白かったですよ。
ファンの方はぜひ。